雨の日のノート

湿ってて書きづらいあれ

IOL2003-2 Arabic Arithmetic解説

問題

原題と解答(英語)はこちら:

https://ioling.org/booklets/iol-2003-indiv-prob.en.pdf#page=2 (問題)

https://ioling.org/booklets/iol-2003-indiv-sol.en.pdf (解答)

下にエジプトアラビア語で書かれた数式がある.数式に現れる数は全て分数であり,かつ24/35を除いて分母も分子も10以下であり,さらに分母は1ではない.

tumn + tumnEn = talatt itmAn (1)

sabaqt itlAt + suds = qacart irbAq (2)

tusqEn + tusq = sudsEn (3)

xamast ixmAs + subq = tamant isbAq (4)

subqEn + xumsEn = 24/35 (5)

注:問題文の数式を書き写す上で,写しやすさのために表記を変えた箇所がある.

問1. 上の数式をアラビア数字(0, 1, 2, ...)を使って書け.

問2. 等式 rubq + qacart itsAq = sabaqt isdAs には記号が一つ欠けている.その記号を答えよ.

解答

問1.

1/8 + 2/8 = 3/8

7/3 + 1/6 = 4/10

1/9 + 2/9 = 2/6

5/5 + 1/7 = 8/7

2/7 + 2/5 = 24/35

問2. 左辺に根号をつけると等式が成立する.

√(1/4 + 10/9) = 7/6

解説

解くのに使った前提知識(アラビア語の知識使ってるのカス)

アラビア語(やヘブライ語など,セム語族の言語)の単語は子音3つ(たまに2つ)が中心的な意味を持っている.

アラビア語(などのセム語族の言語)には単数形(1つ)・双数形(2つ)・複数形(3つ以上)がある.

英語でおなじみの単数形・複数形の他に双数形を持つ言語があるっていうのは知っておいていいと思います.

少し作業をスキップできるだけで,上記の知識がなくても当然解けるように問題は作られています.ただ,上二つは言語オタクには割と有名なのでこの解説でも前提知識としてしまいます.

解き方

まず語根(意味の中心となる子音3つ;分数なのでつまり「数」っぽい)を列挙する.

子音が3つだけの語:

tumn, itmAn, itlAt, suds, irbAq, tusq, ixmAs, subq, isbAq

ここから語根tmn, tlt, sds, rbq, tsq, xms, sbqを得る.

子音が4つある語:

tumnEn, talatt, sabaqt, qacart, tusqEn, sudsEn, xamast, tamant, subqEn, xumsEn

ここでtumnEn, talatt, sabaqt, tusqEn, sudsEn, xamast, tamant, subqEn, xumsEnは先ほど得た語根tmn, tlt, sbq, tsq, sds, xmsを含んでいるように見えるので,最後の子音-tと-nが語根に関係ないとわかる.よって新たに語根qcrを得る.

語根CCCにどんな音が加わって語になっているかも列挙すると,CuCC, CuCCEn, CaCaCt, iCCACがあった.

ここで具体的な数が出てくる(5)の式を考える.

subqEn + xumsEn = 24/35 (5)

ここでエスパーします(カス)

2/5 + 2/7 = 24/35

CCCが数nを表すとしてCuCCEnが双数形の2/nを表すらしい.またCuCCは単独で現れるので単数形1/nっぽい.さらに残り2つは常にCaCaCt iCCACの形でセットで現れるので,どっちかが分母でどっちかが分子(≧3)っぽい(分子を3以上に絞れるのは1か2だったらCuCC, CuCCEnで表すことができるから).ということで(sbq, xms)が(5, 7)を表すことがわかる(どちらがどちらかはわからない).

今度は(1)の式を見てみよう.左辺の分母が両方ともtmnで右辺にもtmnが出てくるのでこれが分母だとうれしいな〜と思いながらCaCaCtが分子,iCCACが分母複数形3, 4, 5,.../nと決め打ちする.進めていって矛盾出てきたら戻ればいいだけ.すると式は

1/tmn + 2/tmn = tlt/tmn

となるので,tlt = 3が得られた.

次は(3), (4)を見る.

tusqEn + tusq = sudsEn (3)

xamast ixmAs + subq = tamant isbAq (4)

分数の形に直す.

2/tsq + 1/tsq = 2/sds

つまり3/tsq = 2/sds

xms/xms + 1/sbq = tmn/sbq

つまり1 + 1/sbq = (sbq + 1)/sbq = tmn/sbq

つまり,tsq : sds = 3 : 2,tmn = sbq + 1とわかった.つまり,sbq, xms, tmnはどれかが決まれば全部決まる.

最後に(2)で試しまくる.

sabaqt itlAt + suds = qacart irbAq (2)

分数の形に直す.

sbq/3 + 1/sds = qcr/rbq

まずsbq = 5としてsdsに2, 4, 8, 9, 10を代入する(3は決まってる,sds = 5ならtmn = 6, xms = 7が決まるので除外).どうしても既約の状態で分母と分子のどちらかが10より大きくなってしまうのでsbqは5ではない.

今度はsbq = 7として,sdsに2, 4, 6, 9, 10を代入する.2/3 = 4/6 = 6/9のように値が等しいものも考えると,次の式が成り立った.

7/3 + 1/6 = 10/4

よってsbq = 7, sds = 6, qcr = 10, rbq = 4, xms = 5, tmn = 8(この2つはsbqが決まると一緒に決まるもの), tsq = 9(tsq : sds = 3 : 2より)となり,数が全て得られた.